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百人百話 其ノ三残り九十七話
後残り
謝る声がなんども聞こえる。
誰の声だろう?何度も何度も、許してあげればいいのに。
可哀相な声、何度も聞いている僕の身になってほしい。
「ね、誰に謝ってるの?」
問うてみても帰ってこない。当たり前だ、謝ってるのは眼では見ること
出来ない幽霊か、はたまた妖怪か何かだろうから。
それにしても・・うっとうしいことこの上ない。
「うるさいよ、ずっとずっと。」
せめて姿をみせるなり、どっかいくなりしてはくれまいか・・。
「ね、君はだぁれ?」
自分はまだ13の子供。答えてくれたっていいと思う。
難しいことは分からないし、頷くことくらいは出来る。
ひとまず分かってることは若い男ということだ。
自分とそんなに変わらない気がする。
そして返答なし。いつも通りの答えだ。
小さい頃からこの季節になると聞こえる声。
誰の声?他人に聞いても何も聞こえない、それが常だ。
続
そういえばここはどこだろう?
周りには誰もいない。何か大切なことを忘れてる気がする。
謝る声の事を僕が訊ねたのは・・・だれだっけ?
「あ・・・れ・・?」
声が止んだ。さっきまで聞こえてたのに。
「ね・・誰?・そこに居るのは・・・」
考えてみると自分の隣に他人は居ただろうか?
鏡が広がったような部屋。
向かいに在るのは自分の姿だと思った。
「・・・誰・・・・?」
自分の姿ではないと気付いて声を漏らす。
「お前の後ろに居た人?」
青年は厭味なく笑って言う。
「あの・・・謝ってた・・・?」
そう問われ頷く。
「ね・・誰に謝ってたの?」
「誰にだと思う?」
「ちゃんと答えてよ・・・なんだか思い出したいこと思い出せない。」
そう言うと傍らに膝をついて僕の頭を撫でてくる。
「思い出さなくていいよ。元から記憶なんて無いんだ。」
「ないって・・そんなわけ・・。」
「あるんだよ、それが。現に俺のこと覚えてないだろう?」
あったことは、ない。けれど慨視感は・・。
「質問を変える・・誰?」
「子供だな・・・お前の兄弟だよ。」
「僕に兄弟なんて居ない。」
あやふやな記憶のなかで返す。
「知ってるわけないよ、お前小さかったもん。」
「なんで・・・幽霊?」
「お前には言われたくないね。」
そういわれ瞬きをする。
それを彼は眩しそうに見る。
「俺が誰に謝ってたか教えてやるよ。」
僕は、一つ頷く。
「ずっとお前に。」
「なんで・・・・?」
「俺は、川に落ちたんだ。それで死んだ。」
それなのになんで僕に謝るのだろう?
「お前は花を川に添えに来て俺みたいに川に落ちた。」
「いつ・・・?」
「お前が三つの時。」
なんだか理論的におかしい気がする。
僕は13才の姿だ。
「なんでかそんなにお前は大きくなってる。俺とは違って。」
「なんで謝ってたの?」
そう問うと悲しげに笑う。
「俺の所為だろ。俺に花を寄せに来て落ちたんだから。」
「もう・・いい。貴方が僕の兄だろうと何でもいい。どうせ覚えてない。」
そういい兄に飛びつく。
「おかえり。」
「覚えてないけど・・ただいま。」
End
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